
それまでは体調も万全だったのに、生理前になると急に体調が悪くなったり、体や精神状態にさまざまな不調を感じます。これは大多数の女性に共通する症状。普段は健康体で、精神状態も良好なのに、生理前になるとなぜかいろんな不調があらわれます。
生理前10日から3日前にかけてあらわれるさまざまな不調。これらはまとめて月経前症候群と呼ばれています。下腹部痛、イライラ、肌荒れ、胸の張り、眠気。月経前症候群というと、このようなものをまず思い浮かべますが、月経前症候群の症状は人それぞれ異なります。理前の寝汗もまたそのひとつです。
生理的な症状なので、完全に生理前の寝汗を予防することは困難ですが、適切な対処法を取らなければ、不快な症状は一向に改善されません。生理前に起こる寝汗の原因や症状、そして対処方法などについて知っておきたいさまざまな情報を幅広くご紹介します。
生理前の寝汗とは
生理前になると寝汗がひどくなるという方は意外に多いようです。生理前の症状にはのぼせやほてりもありますが、寝汗もまたこの類の症状と言えるでしょう。のぼせ、ほてり、微熱、だるさと生理前には、風邪によく似た症状がたくさん出ます。
いつもはそれほどひどくないのに、生理前になると異常に寝汗をかいてしまい、これが原因で睡眠の質が低下し、体から疲れが取れずに体調はさらに悪化する。生理前の寝汗はこのような悪循環に陥ることがあります。
生理前の寝汗はそれ自体が不快なだけでなく、他の不調を招く原因になることもあります。以下に生理前に寝汗がひどくなる原因について詳しく見ていきましょう!
生理前に寝汗をかく原因とは?
風邪を引いているわけでもないのに、生理前になると寝汗をかいてしまうのは、女性ホルモンの分泌量に変化があらわれるせいだと考えられます。
生理や妊娠といった女性の生理機能はすべて、卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲステロン)の分泌によってはじめて正しく機能します。生理前の時期は、これら二つの女性ホルモンの分泌量が変化する時期。生理前のこの時期は、女性ホルモンのはたらきにより、寝汗をはじめ体と心の両方にさまざまな不調が生じます。
卵胞ホルモンの分泌の増減
生理前に体に不調が生じる原因は、卵胞ホルモンと黄体ホルモンの分泌量の推移にあります。
卵胞ホルモンは女性の美しさを司るホルモン。卵胞ホルモンの分泌がピークを迎えるのは排卵日前の時期で、その後徐々に分泌が減り、排卵後しばらくして再び分泌量が増え、生理が始まる前から再び分泌量が減ります。生理中から生理後しばらくは分泌量が少ないままですが、その後卵胞期にぐんと分泌量が増えます。
黄体ホルモンの分泌の増減
黄体ホルモンの分泌量がピークを迎えるのは排卵後。それまでは微量だった分泌量が大幅に増加していき、着床・妊娠が起こらなかった場合は再び分泌量が減少していきます。
黄体ホルモンのはたらきとは?
黄体ホルモンのもっとも重要な働きは、受精卵が子宮内膜に着床しやすいよう、子宮内膜に養分のある血液を集め、ふかふかのベッドを整えること。着床が成立した後は、妊娠状態を継続していけるように、体の機能を調節します。
女性に生理機能にとっては非常に重要な黄体ホルモンですが、黄体ホルモンの分泌量が増えると、それに伴い、体にさまざまな不調が生じやすくなります。
黄体ホルモンが与える影響とは?
黄体ホルモンには体温を高める作用があります。排卵日以降生理前間での期間が、基礎体温グラフの高温期に当たるのは、このはたらきのせい。低温期に比べると体温が若干高いうえ、水分や養分を体に溜め込もうとする作用もあるせいで、体全体が熱を持ったような感じを受ける方もいます。
黄体ホルモンには体に水分を蓄えようとするはたらきがあり、むくみや体重増加も生じることがあります。また妊娠に備えて、基礎体温を上げることにより体を休ませようとします。
女性ホルモンのバランス
このように排卵日から生理前にかけては、卵胞ホルモンと黄体ホルモンのバランスに変化が起こり、これが原因でいろいろな不調が生じます。一般的に月経前症候群の原因というと、黄体ホルモンの分泌が増えるせいと考えがちですが、原因はそれだけではありません。
黄体ホルモンと卵胞ホルモンの関係
黄体ホルモンには確かにむくみや肌荒れを生じさせる作用がありますが、これとは別にホルモンバランスの崩れ自体を正す機能も備わっています。
卵胞ホルモンは女性の美しさの源と捉えられていますが、卵胞ホルモンの過剰分泌は、乳腺症、子宮内膜症、子宮がん、子宮筋腫、乳がんなどの病気を発症させるリスクを高めてしまいます。
黄体ホルモンには卵胞ホルモンとのバランスを取る機能があり、女性ホルモンのバランスを正常に戻してくれます。つまり、黄体ホルモンの分泌は多すぎても、少なすぎてもだめ。月経前症候群の症状がひどいのは、女性ホルモンのバランスの乱れにあるといえるでしょう。
寝汗をかくメカニズムとは?
生理前に寝汗がひどくなる大きな原因は、女性ホルモンのバランスの崩れにありますが、女性の場合は生理前だけでなく、妊娠中にも寝汗がひどくなる傾向があります。
ここで寝汗が出る仕組みについて押さえておきましょう。寝汗は睡眠の機能と密接に関わりがあり、健康に問題のない方であっても、一晩にコップ一杯程度の寝汗をかくといわれています。
体温調節機能とは?
睡眠中に寝汗をかくのは、体温調整機能が体温を下げようとするため。人間の体温の調節を司るのは、脳の前視床下部で、この機能は熱産生・放熱機能と呼ばれています。
熱産生・放熱機能とは、発汗作用によって体温を調節することを指します。額の奥にある体内時計は、日夜のリズムなどを監視しながら、生体リズムを作り出していきます。
熱産生・放出機構は汗を分泌させることにより、この生体リズムに応え、体温を調整。体内時計が設置した理想の体温に近づくように、体は自ら体温を調節しますので、睡眠中の寝汗もこの機能の一種になります。
睡眠中は体温が下がる
睡眠中は昼間と違い、体を動かす必要がほとんどないため、代謝が下がっていき、これに伴い体温が下がると考えられています。体を動かさないために、体の中で作られる熱量が減り、体温が自然に下がっていく、というのが睡眠と体温低下の関係になります。
しかしながら睡眠と体温の関係はこれだけにとどまりません。それは体の深部の体温が低ければ低いほど、睡眠の質が上がるということです。熟睡している状態は「ノンレム睡眠」と呼ばれていますが、この状態の体温は、浅い眠りのときよりも低くなります。
発汗することで体温を下げる
赤ちゃんや子供は眠くなると手足が熱くなりますが、これは手足の末端器官から汗を分泌することにより、体の深部の体温を下げて眠りにつきやすくするため。
発汗し、体から熱を逃がすことにより、体の深部の体温は下がる、この作用により睡眠の質が上がり、しっかりと休息を取ることができます。生理前の寝汗がひどいのは、月経前症候群で消耗した体力を回復させようと、体が自ら深部体温を下げようとしているためともいえるでしょう。
生理前の寝汗の対処法
生理前の寝汗がひどい場合にはいくつか注意したいポイントがあります。寝汗がひどいにも関わらず、そのまま何も対策を取らずにいると、風邪を引いたり、良質の睡眠を取ることができずに体力をさらに消耗させてしまいます。生理前の寝汗に対する対処法をきちんと覚えて、実践するようにしましょう!
吸水性のよいパジャマを着る
寝汗がひどいときに吸水性の悪いものを着て寝ると、寝汗が冷えて、これが原因で風邪を引いてしまいます。生理前だけに限ったことではありませんが、身に着ける衣服はできるだけ天然素材を使ったもの、吸湿性と通気性のよいものを選ぶようにしましょう。
寝汗がひどいにも関わらず、吸水性が悪く、ごわごわした素材を身につけて眠ると、夜中にかいた汗が冷えてしまい、体を冷やしてしまいます。寝るときは汗をかいてもすぐに乾くような、吸水性が良く、乾燥しやすい素材を選ぶようにしてください。
部屋の温度に注意
快眠と部屋の環境、とくに温度には密接な関係があることが証明されています。寒いからといって暖房を強くしすぎると、体温が上がってしまい、さらに汗をかきやすくなってしまいます。部屋の温度に注意し、暖めすぎないようにしましょう。
漢方薬を試してみる
生理前の寝汗には漢方薬が効くといわれています。寝汗がひどく体力を消耗してしまう場合には、産婦人科や漢方医に相談するようにしましょう。
漢方薬の中には、冷え性、寝汗、月経前症候群などを緩和するはたらきのあるものがあります。どの漢方薬が効くかに関しては、ひとりひとりの体質により異なりますので、自己判断せずに、専門知識を備えた漢方医や産婦人科医に相談して、処方してもらうようにしましょう。
月経前症候群の緩和に努める
生理前の寝汗は月経前症候群のひとつですので、寝汗の症状だけをなくそうとするのは無理があります。女性ホルモンの分泌異常は、乱れた生活習慣や食生活によってもたらされます。
体に負担のかかるダイエット、栄養に偏りのある食事、ストレスや過労、運動不足、冷え性など、体と健康に悪いことはすべて、月経前症候群の症状を重くし、月経周期を乱す原因になります。
生理前の不調や生理痛を緩和するには、体全体の調子に注意を払い、乱れた生活習慣を正すことが不可欠。寝汗に対する対処法は所詮対症療法に過ぎず、これだけでは完全に症状を治すことはできません。生理前の寝汗がひどい場合には、対症療法的な対策だけでなく、食習慣・生活習慣を整えることからはじめましょう!
寝汗は病気の症状のあらわれかも
生理前の寝汗は月経前症候群だけでなく、他の病気の兆候という可能性もあります。
単なる生理前の不調だと考えて放置しているうちに症状がひどくなり、病院で診察を受けたら、結果的には他の病気にかかっていた、というケースも当然あります。寝汗がひどい場合に考えられる病気について挙げてみましょう。
甲状腺異常
甲状腺に異常が生じていると、寝汗の症状があらわれるとされています。甲状腺とはのどぼとけの下あたりにある器官で、食べ物に含まれるヨウ素から甲状腺ホルモンを作り出すはたらきがあります。
甲状腺ホルモンの作用として挙げられるのは、体温調節機能、新陳代謝促進、脳・胃腸・心臓の活性化など。甲状腺ホルモンの分泌に異常が生じると、体温調節機能がうまくはたらかなくなり、汗が異常に出る、微熱が続く、暑く感じるなどの症状があらわれます。
寝汗に加えて、甲状腺に腫れを感じるときは早めに病院で診察を受けるようにしましょう。甲状腺異常の病気には、バセドウ病や橋本病などがあります。
自律神経の乱れ
交感神経および副交感神経のバランスが崩れている場合も、寝汗をかきやすくなります。発汗作用は交感神経によって制御されていますので、自律神経のバランスが崩れると、大量の汗が出たり、反対に汗が出にくくなる恐れがあります。
自律神経失調症には、ストレスに対する耐性の弱さ、生活習慣の乱れ、女性ホルモン、性格的な要素が複雑に絡み合っているとされます。自律神経バランスの崩れに原因がある症状としては、多汗、冷や汗、汗が出ない、皮膚のかゆみ・乾燥などが挙げられます。
寝汗が改善されない場合
生活習慣に注意しているにも関わらず、生理前の寝汗がさらにひどくなる場合、寝汗に加えて動悸やめまいなどの症状もひどい場合には、念のため病院で診察を受けるようにしましょう。
寝汗は月経前症候群だけでなく、自律神経失調症や甲状腺異常の兆候の可能性もあります。さらに糖尿病や結核、更年期障害など、多汗を生じさせる病気には早急に対応すべきものもがたくさんあります。自己判断で市販薬を適当に飲むことは勧められません。普段と違う様子を感じたら、早めに専門医に相談するようにしましょう。
まとめ
生理前に寝汗がひどいときに知っておきたいさまざまな情報ををご紹介しました。生理前は女性ホルモンのバランスが変化し、その変化に体がついていけずにさまざまな不調が現れますが、寝汗もそのひとつ。
生理前の寝汗を改善するには、普段から体調を整え、女性ホルモンのバランスを正常に戻すことが必要です。寝汗に対する対処法はもちろんのこと、生理周期のことや寝汗をかく仕組みなどについてきちんと把握し、生理前の寝汗の改善に役立てましょう。