
女性なら、生理前や生理中に一度は腹痛を感じた経験があるのではないでしょうか。誰にでも起こりうることから、「腹痛は我慢すればいい」と軽視しがちですが実は子宮の痛みから来ていることもあります。
子宮の痛みは軽視していると、症状が悪化し手術が必要になるケースもあります。だからこそ、どんな腹痛も軽視すべきではありません。ただ、どんな腹痛に注意が必要で、どんな子宮の痛みがあるのかわからないという方もいらっしゃるでしょう。
そこで、子宮の痛みとして現れる腹痛にはどんな特徴があるのか、子宮の痛みが起きる原因や治療方法まで、幅広くご紹介していきましょう。
子宮の構造について
ひとくちに子宮の痛みと言っても、症状はさまざまです。しかし、子宮についてよくわからないという方も多いことでしょう。女性の身体には、卵巣や膣などさまざまな部位がありますが、子宮とはどのよう部分のことを言うのでしょうか。
子宮は、卵管、卵巣、膣の中継点にあたる部分のことを言います。逆さまの西洋ナシ状の形をしており、長さは約8cm、幅は約4cmで、重さは約40gが平均的です。子宮は上下に区分されており、上の子宮体部と下の子宮頸部で成り立っています。
妊娠すると、上の子宮体部に受精卵が着床し、成長していきます。子宮の内側は子宮内膜と言う粘膜で覆われており、子宮の外側は漿膜で覆われています。その間に、平滑筋と結合組織でできた筋肉層が挟まれており、3つの層で子宮内部を守っているのです。
子宮以外の部位について
子宮の構造についてご紹介しましたが、子宮の働きに大きく関係してくる卵巣や卵管、膣についても簡単に触れておきましょう。卵巣は、子宮を挟んで左右にひとつずつあります。それぞれの卵巣で卵子が作られておりホルモンの分泌調整も行っている大切な部分です。
この卵巣の働きによりホルモンの分泌量が変化してくるため、子宮内膜が厚くなったり生理が起こったりすることに影響が出てきます。
卵管の長さは約10cm~12cmで、子宮を挟んで左右にひとつずつあります。卵巣からお腹の中に排出された卵子は、卵管采から卵管に取り込まれ、卵管を通じて精子と結合する時を待ちます。精子と結合し無事に受精が成立すると、卵管を進んで受精卵は子宮へと移動し、着床するのです。
膣の長さは約10cmあり、子宮の下部分にあたる子宮頸部と繋がっています。膣は伸縮性が高く、粘膜で覆われていますが、これは出産時に赤ちゃんが通りやすいようになっているのです。
子宮は、このような部位と繋がり活動を行っています。
痛みの特徴について
子宮の痛みとひとくちに言っても、傷みの現れ方には違いがあります。
ギューと絞られるような痛みが出ることもあれば、チクチクと針で刺したような痛みが出る場合、強いパンチを受けたような衝撃的な痛み、鈍痛が長く続く痛みなど、さまざまです。
また、痛みのレベルも気にならない程度の痛みもあれば、少し我慢が必要な痛み、お腹をつい抑えてしまうほどの痛み、同じ姿勢が保てないほど強い痛み、立っていられないほど激しい痛み、日常生活に支障をきたす痛み、起き上がることすら困難な痛みなどがあります。
ただ、子宮の痛みは本来なら発生しないものです。痛みが発生しているということは、何か不具合が起きているというサインなので、原因を究明していく必要があるでしょう。
子宮が痛くなる原因
子宮の痛みが発生してしまうのは、さまざまな原因があるからです。では、子宮の痛みの原因となるものには、どんなものがあるのでしょうか。
子宮収縮
まず、比較的心配の少ない子宮の痛みとして、子宮収縮による痛みをご紹介しておきましょう。子宮収縮は、生理が起きているときに発生するもので子宮が大きく収縮することにより傷みが引き起こされる仕組みとなっています。
生理が起きると、子宮内膜の組織や経血は膣を経由して外に排出しようとしますが、強い力がなければ押し出すことができないため、子宮を大きく収縮させてポンプのように動かす必要がでてきます。
生理前は子宮収縮が制限されている状態だったため、急に強い収縮が起きることで子宮に痛みが生じてしまうのです。この場合の子宮の痛みは、下腹部痛として現れやすく生理痛のひとつとして捉えられています。
基本的に問題ない原因だとされていますが、あまりに強く子宮に痛みが出る場合は、子宮を収縮させる物質が過剰に分泌されている可能性があるので、治療する必要が出てくるでしょう。
子宮を収縮させる物質について
子宮の痛みの原因となるものに、子宮が強く収縮することが挙げられます。生理が起きたことにより、子宮内部にある古い組織や経血を外に押し出すために、子宮がポンプのように収縮することから傷みが生じるわけですが、子宮が収縮するのはプロスタグランジンという物質により引き起こされています。
プロスタグランジンは、生理が始まると同時に分泌されますが、分泌量が多いと子宮収縮が強くなりすぎて筋肉が緊張した状態になってしまいます。
筋肉が緊張した状態が続くと、子宮に痛みが生じるだけでなく子宮への血流も悪くなってしまうため、更に痛みが強くなり悪循環が起きてしまうようになるでしょう。また、周辺にも影響が出てくるため、子宮の痛みだけでなく腰痛も引き起こすことがあります。
プロスタグランジンが過剰に分泌されるときは、薬で分泌量を抑える必要が出てくるでしょう。
プロスタグランジンを抑える薬
プロスタグランジンが活発に分泌されると、子宮の収縮が強くなり痛みが生じやすくなります。それを防ぐには、プロスタグランジンの分泌を抑える薬を投与するのがイチバンです。
ただ、薬を服用するタイミングが遅いとプロスタグランジンの分泌を止めることができないため、子宮の痛みを感じたり生理が始まったりしたタイミングですぐに服用するようにしましょう。
また、プロスタグランジンの分泌を抑える薬には副作用もあるため、体質に合わせて種類を選ぶのも重要です。薬剤師や医師に相談し、適切な薬を処方してもらうようにしましょう。
子宮周辺の血流が滞った状態
子宮の痛みを引き起こすプロスタグランジンですが、なぜ過剰に活発されるのでしょうか。原因としては、分泌をコントロールする機関に異常が起きているか、子宮が思うように収縮していないことが関係していると考えられるでしょう。
子宮周辺の血流が滞った状態になると、プロスタグランジンを分泌しても思うように子宮は収縮しません。子宮が収縮しなければ中に溜まった古い組織や経血を押し出すことができないため、さらにたくさんプロスタグランジンを分泌して動かそうとするのです。その結果、激しい収縮が起きて強い痛みが引き起こされてしまいます。
子宮周辺の血流を滞らせるストレスや冷えなどは、プロスタグランジンの過剰な分泌を誘発してしまいますので、注意するようにしましょう。
左右どちらかの痛みは卵巣の異常の可能性
痛みが左右どちらかに偏っている場合は卵巣の異常が考えられます。卵巣の痛みというと卵巣腫瘍や卵巣嚢腫などがありますが、吐き気を伴うほどの非常に強い下腹部痛が急に発生した場合は、卵巣嚢腫茎捻転の可能性があります。
卵巣は子宮との間をつなぐじん帯と、骨盤との間をつなぐじん帯2本に支えられてぶら下がっています。卵巣が嚢腫などで大きくなると、じん帯を軸にして回転してしまう事がありじん帯が捩れてしまい、強い痛みを引き起こします。
すぐ元に戻る事もありますが、まずは医師の診断が必要になります。そのままだと卵巣破裂の可能性も出てくるので、緊急手術が必要です。
性交渉での子宮の痛み
性交後に下腹部が痛くなるという方も多いですが、たいていは摩擦や挿入の強さが原因です。しかし、子宮が痛くなる場所によっては病気によって痛みが引き起こされるケースもあるので、まずはよく確認しましょう。
性交痛は膣の入り口と奥で原因が分かれ、膣の入り口が痛む場合は膣炎や外陰炎の可能性があり、また膣の奥が痛む場合は子宮内膜症や骨盤内感染症など重い病気の可能性があるので、早めに病院を受診しましょう。
その他にも、性器ヘルペスなどの感染症や骨盤のズレや子宮奇形などの先天性異常、それからラテックスアレルギーなども性交痛の原因となります。原因によって対策が変わるので、性交痛が続く場合は病院で検査をしてもらったほうが良いでしょう。
妊娠による子宮の痛み
子宮が痛くなった時は、生理周期と痛みの様子を確認してみましょう。生理予定日の1週間前くらいから痛みが出る場合は、もしかしたら妊娠の可能性が考えられます。特にそれがチクチクしたり引っ張られるような痛みなら、更に妊娠の可能性が高いと言えるでしょう。
受精卵が着床した後から子宮は少しずつ伸縮を繰り返して、おなかの赤ちゃんの成長に伴って伸びていけるように準備しています。その伸縮する時にチクチクとした痛みを感じるようになります。子宮が少しずつ伸びるに従って骨盤の形も変わってくるので、子宮の痛みに加えて股関節や腰が痛くなってしまう方も多いです。
また、妊娠するとホルモン分泌量が急激に増えるため、バランスが崩れて便秘を起こしやすくなり、老廃物の溜まった腸が子宮を圧迫すると、そこから痛みが起きる事もあります。
病気による子宮の痛みについて
子宮に痛みが生じる原因として、プロスタグランジンをご紹介しました。しかし、それ以外にも原因があります。それが、病気による子宮の痛みです。
子宮に何らかの病気が発生すると、それに伴い痛みが生じる場合があります。子宮に痛みを感じるときには、ある程度病気が進行している状態であることが多いので、すぐに対処する必要が出てくるでしょう。
子宮に痛みを生じさせる病気には何があるのか、詳しく見ていきたいと思います。
子宮内膜炎について
子宮に痛みが生じる病気として、子宮内膜炎をご紹介します。子宮内膜炎は、子宮の内膜部分が細菌に感染し炎症が起きてしまう病気です。
通常、子宮内膜は分泌物に被われているため、細菌が侵入し感染することはほとんどありません。しかし、疲れていて免疫力が下がっている時や、病気により抵抗力が落ちている時、また、産後や生理前後は、一時的に細菌が入りやすい状態になります。そのタイミングに細菌が侵入し、感染してしまうと子宮内膜炎を発症し痛みが生じてしまうのです。
子宮内膜炎では、子宮の痛みのほかに、発熱や不正出血、経血量の増加などの症状も現れますので、いつもとは違う様子が感じられたらすぐに病院で診てもらうようにしましょう。
子宮筋腫について
子宮に痛みが生じる病気として、子宮筋腫をご紹介しましょう。子宮筋腫は多くの女性がかかることで知られており、さまざまなサイズの子宮筋腫を持っている可能性が高いと言われています。
子宮筋腫は良性の腫瘍なので、小さければ問題視する必要はありません。しかし、大きく成長してしまうと子宮の痛みを生じさせ、できた場所によっては不妊に繋がる恐れもあるので摘出する必要が出てくるでしょう。
子宮筋腫による子宮の痛みが生じている場合、生理痛もひどく経血にレバー状のドロッとした経血が混じるようになります。また、経血の量も増えてくるので早めに検査しておくようにしましょう。
卵巣腫瘍について
子宮に痛みが生じる病気として、卵巣腫瘍をご紹介しておきましょう。卵巣腫瘍は、卵巣に腫瘍ができる病気で、良性の場合もあれば、悪性の場合、中立の場合があります。
子宮に近いことから痛みが生じることがあり、卵巣腫瘍に圧迫されることからお腹に膨満感が出たり、便秘や頻尿になったりするようになります。
ただ、卵巣腫瘍は痛みなどの症状が現れにくいため、痛みが発生している状態の時はかなり進行していることが多くなります。他の検査により偶然発見されることが多いので、子宮を検査するついでに卵巣も検査しておくようにしましょう。
子宮外妊娠について
子宮に痛みが生じる病気として、子宮外妊娠をご紹介しておきましょう。子宮外妊娠は、子宮腔以外の場所に受精卵が着床してしまうことを言います。
ほとんどのケースで、子宮腔に受精卵は着床しますが、1%ほど少ない確率で子宮外に着床してしまうことがあります。
子宮外妊娠の場合、強い痛みを感じることが多いため、妊娠の可能性が高く我慢できないほど強い痛みを感じたらすぐに病院で診てもらうようにしましょう。放置しておくと、卵管が破裂し大量出血する可能性があるので、すぐに行動することが大切です。
子宮外妊娠の場合、受精卵は育つことができないためどちらにせよ流産する選択を選ぶことになります。母体の負担を少しでも軽減するためにも、早めの受診を心掛けるようにしましょう。
骨盤腹膜炎について
子宮に痛みが生じる病気として、骨盤腹膜炎についてご紹介しておきましょう。骨盤腹膜炎は、子宮や卵巣を覆っている骨盤腹膜が何らかの細菌に感染し炎症が起きることを言います。
子宮内膜症が進行し、骨盤腹膜炎へと発展することもあるでしょう。
免疫力が下がっていると感じたときや、風邪などで体調を崩しているときは感染しやすい状態になるので注意が必要です。また、性交により感染してしまう可能性もあるため、性交の前後にはシャワーを浴びて清潔な状態を心掛けるようにしましょう。
不正出血や痛みの強弱について
子宮に痛みが生じるということは、何かしら身体に異常が起きているということです。多くのケースで、生理に伴う痛みであることが多いですが、病気による可能性も考えられます。
生理以外の時期に出血が起きることを不正出血と言いますが、子宮の痛みを感じ、不正出血が相次ぐ場合は一度病院で診察を受けるようにしましょう。
また、痛みの強弱は人にはわかりづらいものです。少しでも子宮の痛みを辛いと感じたり、我慢できないほど激痛が生じたりしたら、迷わず産婦人科を受診するようにしましょう。早期発見することで、原因を突き止めすぐに治療し回復することができます。
子宮の痛みは誰にでも起きるものだと考えてしまうからこそ、軽視せずすぐに行動を起こすことが大切です。
まとめ
子宮の痛みについて幅広い情報をお届けしました。子宮の痛みが発生するのは、プロスタグランジンや病気などさまざまな原因があることがお分かりいただけたと思います。
生理的な作用で子宮に痛みが生じる場合もありますが、病気の可能性があることを理解し、異変を感じたらすぐに受診するようにしましょう。
早めに対処することで、身体を健やかな状態に保つことができますし、身体についてより深く考えることができます。子宮の痛みをきっかけに、自分の身体と向き合ってみてください。